少年の父親は、その年の12月の第二週に他界した。葬式にもどった時に、母親は泣き続けていた。
何もできない母に代わって、父の会社の人達がお葬式を取り仕切ってくれた。
何人かの父親の部下のヒトが少年に仕事をくれて、あまり悲しんで居られないのが少年には
助かった。本葬のときには、父の遺影と焼香する参列者の間に座って、手を合わせる人達の
顔を見ていた。最後の参列者が礼をして席にもどるときに、涙が急に目に溢れ、
何も見えなくなった。少年は何も見えなくても立って礼をするだけで良いことを
ありがたいと思った。
何もできない母に代わって、父の会社の人達がお葬式を取り仕切ってくれた。
何人かの父親の部下のヒトが少年に仕事をくれて、あまり悲しんで居られないのが少年には
助かった。本葬のときには、父の遺影と焼香する参列者の間に座って、手を合わせる人達の
顔を見ていた。最後の参列者が礼をして席にもどるときに、涙が急に目に溢れ、
何も見えなくなった。少年は何も見えなくても立って礼をするだけで良いことを
ありがたいと思った。
葬式が終わり最後まで残っていた親戚が去ったあとは、母はほとんど何も話さなかった。
ちょうど冬休みに入ったので、少年はそのまま自宅に残った。母親が何も話さない間、
少年は本を読んだ。ドクトル・ジバゴでユーリー・ジバコがラーラと暮らしたシベリアでの
場面に羨望と親しみを感じた。
ちょうど冬休みに入ったので、少年はそのまま自宅に残った。母親が何も話さない間、
少年は本を読んだ。ドクトル・ジバゴでユーリー・ジバコがラーラと暮らしたシベリアでの
場面に羨望と親しみを感じた。
暮れていく実家での生活で、あの箱に入ったサチフダがあれば、母の名前を書いて
幸せを呼べるのに、と、少年は考えた。考えた時に、文房具屋の女店主が少女の名前を
知っていることも思い出したが、今はフダも箱もなかった。
幸せを呼べるのに、と、少年は考えた。考えた時に、文房具屋の女店主が少女の名前を
知っていることも思い出したが、今はフダも箱もなかった。
三十日に、伯母が訪ねてくれた。母親は、郷里から出てきて父の妻として我慢が続いたことを
話しはじめた。父親がいなくなった今、自分のために生きなければならないと決心したとのことで、
だんだん声は力強くなった。何年か前の正月に父に食事を作らせていた時と
同じ母親が戻ってきたように思えた。少年は少しホッとした。
話しはじめた。父親がいなくなった今、自分のために生きなければならないと決心したとのことで、
だんだん声は力強くなった。何年か前の正月に父に食事を作らせていた時と
同じ母親が戻ってきたように思えた。少年は少しホッとした。
少年は、大学を卒業し大学院に進んで、会社への就職を決めた。少年は青年になっていた。
採用されたのは、実家から通える会社だった。最終面接が決まったあとも、長い休みの時には、
会社からの呼び出しがあった。当時、優秀な人材は他の会社に就職活動に行かないように、
休みのたびに会社が呼び出して研修に参加させられた。それでも大晦日には研修が休みで、
実家でのんびりしできたので、文房具屋に行ってみることにした。青年が大学院に通っている間に、
女店主はめっきり老けてしまい、店は陳列する商品が訪ねるたびに減り、寂れていたが、
いつも青年が訪ねると喜んでくれた。その日も、とりあえず本を買って女店主と話すつもりだった。
採用されたのは、実家から通える会社だった。最終面接が決まったあとも、長い休みの時には、
会社からの呼び出しがあった。当時、優秀な人材は他の会社に就職活動に行かないように、
休みのたびに会社が呼び出して研修に参加させられた。それでも大晦日には研修が休みで、
実家でのんびりしできたので、文房具屋に行ってみることにした。青年が大学院に通っている間に、
女店主はめっきり老けてしまい、店は陳列する商品が訪ねるたびに減り、寂れていたが、
いつも青年が訪ねると喜んでくれた。その日も、とりあえず本を買って女店主と話すつもりだった。
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