娘は、文房具屋の娘というのが嫌いだった。文房具を売っている店の娘ということが
知られると、小学校ではいじめられた。サラリーマンの子弟ばかりの小学校では、
自分の家の売り物で勉強している同級生が異質に見えたらしい。
結局、娘は隣町の小学校に転校した。
文房具も本も好きではなかったが、同級生にうまく溶けこむことが不得意だったので、
娘は店を手伝ったとのことだった。途中からは時間が余ってしまうため、娘は、
店の手伝いをするふりをしていつも本を読んでいた。そのころから、
住民の多くは駅前の本屋で本を買うようになったので、本は売れずにいつまでも
代わらなかった。ところが、そのころ通い始めた少年が、本を買うようになって、
空いたスペースに新しい本が入ってくるようになった。
娘にとって少年は、新しい本を運んで来てくれる存在だった。とはいえ、
この店の子であることは知られたくなかった娘は、少年が来た時には店員ではない
ような位置に立つようにしていた。本が並ぶ棚と文房具が並ぶ棚の中間の位置に立って、
文房具を選ぶような姿勢をすると、本当に自分が客であるように思えた。
ただ、いつも、自分の母親にお金を支払うときには少年を後ろから見ていた。
知られると、小学校ではいじめられた。サラリーマンの子弟ばかりの小学校では、
自分の家の売り物で勉強している同級生が異質に見えたらしい。
結局、娘は隣町の小学校に転校した。
文房具も本も好きではなかったが、同級生にうまく溶けこむことが不得意だったので、
娘は店を手伝ったとのことだった。途中からは時間が余ってしまうため、娘は、
店の手伝いをするふりをしていつも本を読んでいた。そのころから、
住民の多くは駅前の本屋で本を買うようになったので、本は売れずにいつまでも
代わらなかった。ところが、そのころ通い始めた少年が、本を買うようになって、
空いたスペースに新しい本が入ってくるようになった。
娘にとって少年は、新しい本を運んで来てくれる存在だった。とはいえ、
この店の子であることは知られたくなかった娘は、少年が来た時には店員ではない
ような位置に立つようにしていた。本が並ぶ棚と文房具が並ぶ棚の中間の位置に立って、
文房具を選ぶような姿勢をすると、本当に自分が客であるように思えた。
ただ、いつも、自分の母親にお金を支払うときには少年を後ろから見ていた。
たくさんの本を読んだ読解力は、中学時代から少女の成績を向上させた。
店主である母親にとっては、娘が自慢と希望になった。娘は地元の大学にできた
情報科学の分野に進んだ。
「今の文房具屋は流行らないけど、いずれ流通の仕組みは変わる。そのときには、
今度は駅前の本屋よりも、この文房具屋の方が先端を行くのよ!」
と力強い声で拳を振り上げる娘は、青年が何度も想像した娘とは異なっていた。
でも、青年には娘が自分の想像と違っていることが楽しかった。
店主である母親にとっては、娘が自慢と希望になった。娘は地元の大学にできた
情報科学の分野に進んだ。
「今の文房具屋は流行らないけど、いずれ流通の仕組みは変わる。そのときには、
今度は駅前の本屋よりも、この文房具屋の方が先端を行くのよ!」
と力強い声で拳を振り上げる娘は、青年が何度も想像した娘とは異なっていた。
でも、青年には娘が自分の想像と違っていることが楽しかった。
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